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北海道の仕事と暮らし33 「顧客の創造」とは

北海道の仕事と暮らし33 「顧客の創造」とは

おはようございます。
 中川町から下川町へ。「川」つながりとはいえ、車で2時間かかる。目的地はソーリー工房さんのコソット・ハット。年末なので開いているかどうかわからない。「ともかく行ってみよう」と思って訪ねてみると、絶妙のタイミングだった。アイスキャンドルの準備中だったのだ。買い物だけの予定だったが、にわかに取材モードへ変わっていった。夕刻、アイスキャンドルの灯りでコソット・ハットが幻想的に浮かび上がっていた。

「顧客」の範囲

アイスキャンドルは北海道の豊かな暮らしを彩るツールといえます。バケツでつくるもの……というイメージが強かったためか、自分ではまだ作ったことがありません。昨日のアイスキャンドルは2タイプ。牛乳の紙パックとヨーグルトの容器を使ったもの。僕らでも簡単に作れそうな気がします。
 華やかな電飾もよいけれど、ゆらゆら風に揺れるアイスキャンドルの炎が好ましいものに感じられます。下川町一の橋地区の景観にピッタリ。これを帯広の我が家で行ったら、どんな感じになるだろう? 下川ほどではないにしろ、我が家でもいい雰囲気になりそうな気がします。明日のクナウマガジン忘年会には間に合いませんが、一度アイスキャンドルとハスカップワイン(中川町)の組み合わせで、冬の夜を過ごしてみたいと思います。
 いきなり話が変わりますが、企業経営の目的は「利益の追求」であると思い込んでいる人がまだまだ多いようです。企業にとって利益は欠かせないもの。ですが、利益は経営ビジョン実現のために必要なものであって、それ自体が目的であるはずはありません。企業の目的は「人の幸せ」であったり、「世の中をよりよくする」ことであるはず。
 ピーター・ドラッカーは企業の目的を「顧客を創造すること」と定義づけています。「顧客」という言葉の捉え方が、人によって大きく異なっているようだということに、10数年前に気づきました。顧客=お金を払う人。そのように捉えると、企業経営は「利益の追求」ということになっていくでしょう。
 顧客という言葉をもっと広く捉えていかなければ、社会的に価値のある会社になっていかないのではなかろうか? これはあくまでも僕の私見。僕の考えとは反対に、「お金を払う人(顧客)に最善を尽くす」という考え方で立派な活動を行っている企業も多数あります。
 ただ、地方で経済活動を起こっていると、顧客という言葉の範囲を広げて捉えなければ、心豊かに仕事をすることはできないのではないかと思うのです。極端な話、「自分以外はみんな顧客」。そういう姿勢で仕事をしている人の中に、素晴らしい実績をつくり出している人が地方では少なくありません。お金を払おうが払うまいが、誰に対しても自分の持っている価値を自分のできる範囲内で提供する。言葉にするとまわりくどくなりますが、地方ではほとんど誰もが当たり前のように経験していることではないでしょうか。
 帯広に住んでからすごく増えたことがあります。それは「お裾分け」という経験。職場でも取材先でも、たまには近所に住む人からも、お裾分けされることがある。食べ物のケースが圧倒的に多いのですが、たまには「ついでにドアの緩みを直しておいたから……」といった技術系(?)のお裾分けもあります。

自分と同じくらい大事だと思える人

このあたり、あらゆるものを貨幣価値に変換する大企業型の経済とはちょっと違った原理が働いているような気がします。これが行き過ぎると、無料奉仕が増えて売上も利益も上がらない活動となってしまいます。線引きがちょっと難しい。仕事現場では、ある程度個人の裁量に委ねられているところがあるでしょう。地域企業の社員のほうが経営者感覚が求められる。僕はそう考えています。顧客の利益と自社の利益とのバランスを常に考えて意思決定していかねばなりません。
 我が社の経営計画書の中では、「自分自身も顧客である」と説明しています。顧客は大切な存在。ですが、自分を犠牲にして顧客第一主義を強いることを我が社ではよしとしていません。どちらも大切。ですから、「自分と同じくらい大事だと思える人」を増やすことが、ドラッカーの言う「顧客の創造」なのだと解釈しています。僕独自の理解の仕方なので、もし違っていたとしてもお許しください。
 そのようにして考えていくと、自分がとことん楽しめることや大事にしたいと思っていることを熱心に継続的に行っていくこと。それが顧客の創造につながり、自社を成長させ、地域の人たちのためになっていくのではないか? 僕らはそのようにして、雑誌をはじめとする自社商品を開発してきたのではなかろうか? 原点に立ち戻ると、それは紛れもない事実だと考えています。
 これは売れそうだからとか、マーケティング的な裏付けがあるから……といって開始した事業、商品は、ほとんどひとつもありません。僕らが「これは売れそうだ」と言葉にするときは、「自分がほしくなる商品だ」という意味。我が社に限らず、地域企業の商品は「自分がほしいかどうか」というところから誕生しているのではないでしょうか。
 自分がほしくなるものには、値段のつけられるものとつけられないものとがあります。コソット・ハットのアイスキャンドルは値段のつけられないもの。ですが、自分たちが楽しむだけではなく、関わった人や通りがかった人にも豊かさのお裾分けをしている。ここに地域経済を豊かにする鍵があるような気がします。
 数時間の楽しみのために数日前から準備をする。北海道では多くの人が経験することです。イベントなどでは数ヵ月前から準備が始まる。「自分が楽しい」というだけではなく、そこには「誰かを喜ばせたい」という気持ちが存在します。僕の考えでは、これこそ経済活動そのものであって、価格がついているかどうかだけの違いに過ぎません。地域企業が考えねばならないのは、どの部分に価格をつけるべきか、あるいはつけないべきかというところ。僕の頭の中では、まだ明確な線引きができずにいます。

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